サンドアートとは?
2025/10/04

©︎サンドアーティスト Kohei
本ページでは『広義の意味でのサンドアート』とその『歴史』について、大学の非常勤講師も務めるKoheiが解説します。
サンドアートを単なる演出や娯楽としてではなく、砂という素材を用いた表現文化として広い視点から解説する試みです。
まず広義の定義として
『サンドアート』とは主に砂を用いて作った芸術作品の全般の事です。
(ページ🔽最下部にも動画による解説を入れています。)
※なぜ「広義」のと前置きするのというと、サンドアートには砂像やチベットの砂曼荼羅など古今東西様々なものがある為にジャンルによって意味が混合されてしまうからです。
本ページではまず、光と砂を用いる狭義の「サンドアート」を解説(①と②)し、③『広義のサンドアート』と『歴史』についても解説しています。
この記事を執筆する為に様々な事を調べましたが、どれほど調べても砂表現全般を詳細に記載した書物やネット記事は見当たらず、このページはKoheiの実体験も踏まえた非常に珍しい情報の宝庫だなと自負しています。ぜひ最後までご覧ください。
【 目次 】
サンドアートとは?
①. サンドアートパフォーマンス
②. サンドアート(映像作品)
③. 世界の『サンドアート』とその『歴史』
① サンドアートパフォーマンスとは?
「サンドアートパフォーマンス」とはガラスに敷いた砂をバックライトで照らしながら音楽に合わせて砂絵を展開していく瞬間芸術です。

サンドアートパフォーマンスの特徴
- 次々と砂絵が展開するので保存ができない
- モチーフによっては非常に早く完成できる
- 砂をコントロールする指先の技術が必要
- 同じ絵の再現ができない
- 人よって手の形が異なる為に作家それぞれタッチが違う
- 描き消えていく過程そのものを含めた時間軸と、生身の人間が描く身体性を伴う表現文化
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サンドアートパフォーマンスそのものに温かくて感動系の演出といったイメージが定着しています。
(後述のウクライナの有名なサンドアーティスト:クセニヤ・シモノヴァ氏の影響が源流です。)
🔽実際にそういった感想を言われる事が多いです。

テーマに合わせ砂選びから設計できるサンドアート表現
金属加工の企業イベントでは砂鉄。お茶の名所では抹茶。
夏の時期の催しでは青砂を使うなど、『場』に即した素材選びもサンドアートの重要な要素です。


だからと言ってどんな砂でもパフォーマンスに使えるわけではありません。
目的に応じた砂粒が必要なのです。
🔽サンドアートパフォーマンスが、実際にどのような場面で用いられているのかについては、こちらで解説しています。

② サンドアート(映像作品)
パフォーマンス映像や、映像作品単体として制作される作品の事。
サンドアート(映像作品)の特徴
- データとしての保存が前提
- 緻密な砂絵が描ける
- 編集やアテレコで幅の広い表現が可能
例えば下の重機のサンドアートは10時間ほどの作画で描いた砂絵です。
パフォーマンスのように一瞬では描けませんが編集で短い時間に落とし込んで活用します。

サンドアート映像の一例(制作期間2ヶ月ほど):パフォーマンスとの違いは圧倒的な書き込みの細かさです。
③世界の『サンドアート』とその『歴史』
ここからは「世界のサンドアートとその歴史」について解説します。
人類の誕生はおよそ500万年前と言われています。 太古の昔から人類は絵や文字を大地や壁に描き残してきました。
地面に描かれた絵や壁画の痕跡が世界各地に数多く残されています。

砂場や砂浜に絵を描いたり砂でお城を作ったりしたという経験は誰もが持っていると思います。
最も身近で誰でも簡単に出来るアートがお絵描きであり、人類で初めて指で地面に絵を描いた人がいたら、それが「砂絵」の歴史の始まりであり、アートの始まりであるのかもしれません。
地面に絵を描くという行為から、描いた絵を人に見てもらいたい、見せたいとなり、もっと上手に描きたいとなってアートとして発展していったのでしょう。
砂に絵を描く、または砂を使って絵を描く「砂絵」のルーツもその延長線上にあると思われます。
そんな砂絵の歴史を紐解いてみると多種多様な砂絵が世界各地で確認できるのです。
ここで少し世界のサンドアートをいくつか紹介してみましょう。
「ナバホ族の砂絵」
アメリカ南西部の先住民であるナバホ族に砂絵を描く儀式が存在します。祈祷師が病気などの治療の際に、色のついた石を砕いて作った砂や土で模様を描く儀式です。
砂に着色はせず、希望の色の石が手に入らない場合はトウモロコシの粉や乾燥した花を代用して使います。
砂絵は比較的短時間で描かれて破壊することで儀式が完成します。

「メキシコ、死者の日の砂絵」
メキシコで毎年11月に行われる「死者の日」は日本で言うところのお盆にあたります。
亡くなった方の魂が帰ってくるのをお迎えする行事で、街にはガイコツが溢れカラフルで楽しいお祭りのような日となります。死者の日に祭壇や墓地を飾る際に頻繁に砂絵が使われ、マリーゴールドなどの花やキャンドルでカラフルに砂絵が飾られます。
「バヌアツの砂絵」
約82の群島からなるバヌアツ共和国には古来より各島々の部族との通信や伝達の手段として砂絵が使われてきました。
民族の儀式や記録の手段としても砂絵が継承されています。砂絵への造詣が深い熟練者により、砂や火山灰や粘土の上に1本の指で幾何学模様を一筆書きで描きます。この砂絵は2003年に世界無形文化遺産に登録されています。
「インドのコーラムとランゴーリ」(地域によって呼称が分かれるようです。)
コーラムとは
主に南インドで女性が庭などに描く砂絵です。元々は毎朝、玄関先(入り口)に描かれ米粉や小麦粉を使って蟻や鳥に奉じる意味があったそうです。
今では着色した岩粉や石灰を使用して幾何学模様や花模様など多岐にわたる模様が描かれます。
結婚式など盛大な行事では路面を覆うほどの大きな砂絵が女性たちの手で作られます。
コーラムの上を歩いて壊されると良いことが起きるとされています。

上のコーラム画像はコーラムアーティストである山下なお様からご提供いただきました。
日本では非常に珍しいコーラムの教室「Mahā Śakti」(奈良県) を運営されています。
ランゴーリとは
インド全土で一般的に使われる呼称。カラフルな色粉や花びらを使うことが多い。
「チベットの曼荼羅(まんだら)」
チベット仏教では瞑想を行いながら色砂で何週間もかけて曼荼羅を描くという修行が存在します。 土の上に金属のロートを使って着色した石の粉を少しずつ撒いて色鮮やかな絵図を描きます。その緻密で繊細な模様は仏の悟った境地や功徳を絵にしたもので、完成すると一定の手順に従って壊されます。使用した砂を川に流すまでが修行とされています。
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ここに挙げた世界の砂絵はほんの一部ですが、さらに包括的に捉えると古代エジプトの壁画や象形文字、ナスカの地上絵なども砂絵と言えるかもしれません。
人が暮らす地にはいつの時代も当然のように砂や土といった地面に描かれた絵があったことが想像できます。

では、ここ日本での砂絵の歴史を紹介してみましょう。
銭形砂絵:最強の金運パワースポット
日本の砂絵として最も有名な「銭形砂絵」は外せません。 1600年代、江戸時代に造られた縦122m、横90m、周囲345mという巨大な「寛永通宝」が描かれた砂絵が香川県観音寺市に現存しています。
一夜にして作られたという伝説もあり金運スポットとしても有名です。台風でもびくともしない頑強さも併せ持った巨大なサンドアートです。
テレビ時代劇「銭形平次」のタイトルバックにも使用されたので見たことがあるという人も多いでしょう。

また、砂絵を芸術として表現する「盆石」というサンドアートの文化が日本古来よりあります。
漆塗りの黒いお盆の上に白い砂で自然の風景を描き、枯山水のように岩や山に見立てて自然石などを配置する縮景芸術です。
室町時代に東山文化を築いた足利義政が確立したと言われ、茶会などの時に茶室に飾られることが多く、使用後は壊されてしまうことも儚く美しいとされています。
さらに時代は進み、砂絵が一般庶民にも認識されたのは江戸時代あたりとされています。
「バナナの叩き売り」や「ガマの油売り」などと言った街なかで威勢よく物を売る大道芸のようなもので、年末年始や縁日などで大衆を惹きつける独特のセリフ回しで知られる「啖呵売(たんかばい)」から広まったとされています。国民的映画である「男はつらいよ」でフーテンの寅さんが大衆を集めて物売りをしているシーンを思い浮かべると分かりやすいと思います。
大道芸のひとつとして「砂絵書き」「砂書き」「砂絵屋」として江戸時代後期ぐらいから世間に広まっていったとされています。威勢よくアピールしてリクエストに応じてその場で砂絵を描く芸として人気を博す人もいたようです。今で言うとお祭りなどで似顔絵を描いてくれる絵描きさんのような感じでしょうか。豊作を願って砂で模様を描く伝統行事などでも「砂絵書き」が重宝されたようです。

江戸時代の砂絵師をテーマにした文学作品としては、『血みどろ砂絵』都筑道夫・著(江戸時代のサンドアーティストとも言える「砂絵坊主」を主人公にした小説)が存在します。
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現代では砂絵は「サンドアート」という芸術分野になり、砂絵師は「サンドアーティスト」となりました。砂浜の砂で城などを造形する「サンドスタチュー」や、糊の貼られたシートにマスキングして色砂をまぶして作る「サンドペインティング」や、瓶の中に色砂を敷き詰めて地層の模様で絵を描く「グラスサンドアート」や、前述の「サンドアートパフォーマンス」など、いくつかの種類に分類される多様なアートに進化しています。
「サンドアートパフォーマンス」の歴史
日本においてサンドアートパフォーマンスが一般に知られるようになったのは1996年に開催された「広島国際アニメーション映画祭」に砂アニメーションのパイオニアであるハンガリーのフレンク・カーコ氏が来日してパフォーマンスを披露したことに端を発します。映画祭ディレクターが「砂アニメーションをライブパフォーマンスでやってみたらどう?」というアイディアを出したことでサンドアートパフォーマンスの歴史が始まったと言われています。
国際的に著名なパフォーマーたちがサンドアートを広め、中でも世界的な大人気テレビ番組「ゴットタレント」に出演して見事優勝したウクライナのクセニア・シモノヴァ氏のパフォーマンス動画がYouTubeにアップロードされ全世界で3,000万以上の再生回数を記録し、サンドアートパフォーマンスの存在を世界に広く知らしめました。
Kseniya Simonova(クセニヤ・シモノヴァ)の功績について
2009年、テレビ番組『ウクライナ版 Got Talent 』で披露した第二次世界大戦をテーマにしたサンドアート作品が世界的に拡散。
- 単なる技巧ではない
- 歴史・記憶・感情を扱った物語性
- 観客が号泣する構成力
「サンドアートとは感動的な芸術である」というイメージを世界規模で定着させた人物です。
第二次世界大戦時に最も死者がでた戦争が独ソ戦(ナチスドイツ対ソビエト連邦)であり、彼女の故郷・ウクライナはその主戦場として国民の2割ほどが亡くなってしまいました。
(当時、ウクライナはソ連の一部であり、多くのユダヤ人も在住していた為に沢山の方が悲惨な目に遭いました。)
こうした集団的経験があったので、第二次世界大戦をテーマにしたサンドアート作品というのは「サンドアートは単なるイベント演出ではなく人生(時間軸)を表現できる」という主張に、歴史的な裏付けを与えたのです。
🔽動画が残っているので是非ご覧ください。
当時のKseniya Simonova(クセニヤ・シモノヴァ)氏の作品の特徴(だいぶKoheiの主観が入っていることはご了承ください)
- TV出演を意識した圧倒的な速描き。
荒さは意に介さず描き進め、限限まで単純化された砂絵で時間を節約しています。
- 非常に細かい砂。
『落とし砂』という技法を多用していますが、描くスピードに対して砂の散らばりが少ない点や、グラデーションの滑らかさから非常に細かい砂を使っているようです。
- 主題選びの秀逸さ
ウクライナ人なら誰もが共感する主題選び。その後の作品でも『病気の少女』をテーマにした作品を描いていて共感性の高いテーマを選んでいる事が分かります。
- キャンバス(ガラス板)の大きさ
大きなサイズのガラス板を使用していて、スピード感で生じてしまう荒い部分をカバーしています。、できるだけ新しいガラスを使用して摩擦係数を減らしスピードを損なわないようにしています。
実は日本で最初のサンドアート(砂アニメーション、サンドパフォーマンス)の発表(日本サンドアート界の第一人者、飯面雅子氏による)は1980年代と、シモノヴァ氏の活躍より以前の事です。
それでも「サンドアートパフォーマンス」というジャンルは意外と歴史が浅く、まだまだ若い芸術分野と言えます。
世界的にもサンドアーティストの数はまだまだ少ないのですが、その数は年々増えていっています。サンドアートの需要はとても高く今やアートの1ジャンルへと発展しているのです。
(執筆:Taka氏 & Kohei 監修:Kohei)
現代作家のサンドアート
“サンドピクチャー”
オーストリアのアーティスト Klaus Beisch(クラウス・ベッシュ)氏によるアート作品で、2枚のガラス板の間に「比重の異なる砂・水・空気」が封入されており、作品を上下・左右にひっくり返す・傾けるなどすることで、砂が動き、その度に異なる模様や風景を描き出す“動く砂の絵。作家の意図や自然物の偶然性が創る造形”という特徴を持ちます。
作品を傾ける度に新たな動きを生み出し、「変化し続ける自然が描く芸術」。
“サンドピクチャー”の特長・魅力
- 唯一無二の造形:ガラス板の中で砂が落ちる・流れる・形づくるその瞬間は、同じ形には二度とならないという“偶発性”があります。
- インタラクティブ/動的:鑑賞者が作品を傾けたり回転させることで変化を楽しめるため、“静止画”ではなく“動く絵”としての魅力があります。
- インテリア・アートの融合:美術作品としても、インテリアアイテムとしても使える点が魅力。日本国内で「サンドピクチャー」シリーズとして販売されていて、“コレクション性・限定性”(シリアルナンバー入り等)を持つ商品もあります。
ブランド名:KB collection
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出典:Sand Picture Gallery Japan
“グラスサンドアート”
グラスサンドアートとはガラス容器の中に色砂を重ねて描くサンドアートです。
スプーンで窪みを作ったり、細長い道具を使い砂の位置を緻密に調整することで多彩な表現が可能になります。
一度入れた砂は基本的に取り出せず完成形をイメージして慎重に砂の流し方や角度を調整する必要があるため設計力と集中力が求められます。
主な使用シーン
- インテリア装飾(自宅・店舗・モデルルーム)
- 開店祝いや周年祝いでの装飾
- ウェディング装飾など
サンドアートパフォーマンスは瞬間芸術であるのに対しグラスサンドアートは“長期間飾れる”ことが最大の特徴です。
日本ではグラスサンドアーティストの湯浅まり子氏が百貨店でのコラボ商品やワークショップなどで有名です。
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出典:ニコマリーカラーサンドアート
◎公式サイトhttps://nicomary-colorsand-art.hp.peraichi.com/
◎公式Instagramhttps://www.instagram.com/nicomary_colorsand_art







